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Case Study

食品工場の点検業務を、電子帳票に。

全国に拠点をもつ食品工場で、紙で行っていた日々の点検・日報業務を電子化した社内システム。現場が記録する iPad と、承認・品質管理を担う PC の管理画面。性質の異なる2つの画面群を、要件整理の段階から一貫して設計しました。

Role企画・要件整理・情報設計・UI設計
Year2025
Domain業務システム(食品工場・社内)
Surface現場:iPad / 管理:PC(ブラウザ)
Scope要件整理 〜 試験運用まで通しで
ToolsFigma / Jira / Confluence
26工場以上電子化の対象となる、全国の工場。拠点は今後も増える見込みで、その前提が〈共通の型+独自の登録〉という設計の理由になった。
16帳票最終的に電子化する帳票の種類。バージョンを分けて、いまも順次リリースしている。
2設計した画面群。記録する現場の iPad と、承認・管理の PC。性質の異なる2種類のユーザーを、1つのシステムとして両立させた。
注目ポイント

福岡の食品工場へ見学に行き、手袋とタッチペンで操作する現場を自分の目で見たこと。そこで分かったことを、タップ領域の大きさや独自のテンキーUIに落とし込んでいます。

現場 — iPad

帳票一覧:使用水の点検・官能検査記録・金属探知機/X線探知機・清掃記録など、8種の点検帳票がカードで並ぶホーム画面
帳票一覧(ホーム)
点検の入力画面:味・臭い・色などの項目を正常はチェックのタップで、pH値や残留塩素濃度は数値で記録する、使用水点検の入力フォーム
点検の入力画面
点検結果の確認画面:提出前の確認画面。臭いが「異常あり」で原因と対応が表示され、ほかの項目は正常として一覧される
点検結果の確認

※守秘義務に配慮し、実際のプロジェクトをもとに、画面構成・文言・データ・一部仕様をポートフォリオ用に再構成しています。

User flow

記録する人と、精査する人。

点検の入力画面を表示したiPad
現場の作業者 / iPad

点検を、記録して提出する。

帳票を選ぶ → 正常はワンタップ、異常だけ詳細 → 提出前に結果を確認。手袋とタッチペンでも押せるタップ領域、独自のテンキーUI。

提出
承認申請管理の画面を表示したノートPC
承認者・品質管理部 / PC

確認して、承認・差し戻す。

一覧で結果を確認 → 承認、または差し戻し → 必要なデータを CSV で書き出す。工場ごとの帳票テンプレートも、ここで作成・設定する。

帳票テンプレートを配信する。管理画面で〈共通の型〉に工場ごとの独自項目を差し込み、現場の iPad へ。26工場以上・全16帳票の違いを、この一往復で吸収している。

忙しい現場の入力体験と、精査する品質管理部の管理体験。性質の異なる2種類のユーザーを、1つのシステムとして両立させた。

01 / Overview

紙の点検を、現場が迷わない電子帳票に。

全国に拠点をもつ食品工場では、日々の設備点検や品質チェックを紙の日報で記録していました。このプロジェクトは、その点検・日報業務を電子帳票化し、業務を効率化するための社内システムです。

システムは、性質の異なる2つの画面群からなります。現場の作業者が点検を記録する iPad と、承認者・品質管理部が結果を確認・承認し、帳票そのものを整える PCの管理画面。わたしは企画・要件整理の段階から加わり、この両方の情報設計・UI設計から試験運用までを一貫して担当しました。

02 / Problem

工場ごとに違う日報を、どう1つの仕組みにするか。

食品工場は全国にあり、つくる食品も使う機械も拠点ごとに異なります。そのため点検の項目も頻度も、そして日報の様式そのものも工場ごとにバラバラ。「1つのシステムに統一する」ことが、そもそも難しい構造でした。

加えて、紙の日報は保管や検索に手間がかかり、点検結果を確認・集計するのも簡単ではありません。

そして現場は忙しい。記録すること自体が負担になれば、電子化しても使われなくなります。〈統一のしにくさ〉〈紙の限界〉〈現場の忙しさ〉。この3つを、同時に解く必要がありました。

03 / Design decisions

考えたこと、決めたこと。

設計にあたって、福岡の食品工場へ見学に行きました。現場では、手袋をつけたままタッチペンでiPadを操作します。働く人の年齢層も幅広い。画面の前で想像していた「現場」と実際との差を、自分の目で確かめておきたかったからです。

この見学が、細部の判断を決めました。ボタンとタップ領域は、手袋とタッチペンでも確実に押せる大きさに。数字の入力には、OS標準のキーボードではなく大きな独自のテンキーUIを用意しました。年齢や機器への慣れにかかわらず、誰でも同じように記録できることを優先しています。

数値入力の独自テンキー:0・00・000のキーとクリア・削除を大きく配置し、確定は緑の「登録」ボタン。背景に使用水点検の入力フォームが見えている
数値入力の独自テンキーOS標準のキーボードは、手袋とタッチペンでは狙いにくく、画面の半分を覆ってしまう。0・00・000をまとめたキー配置と大きなタップ領域にして、入力中も背後の帳票が見えるようにした。

そのうえで、現場(iPad)で記録する体験について。忙しい現場が、迷わず続けられることを軸に判断しました。

01Balance

統一と自由度の“境界”を、対話で決める。

どこまでをシステムで統一し、どこからを工場ごとに委ねるか。この線引きこそが設計の核でした。クライアントとの打ち合わせを重ねて境界を見極め、共通の型は保ちながら、工場が独自の点検項目を登録できる汎用性を持たせました。(この“独自に登録できる”仕組みは、後述の管理画面で「帳票テンプレート」として実装しています。)

02Input

正常はワンタップ、異常だけ詳細。

点検の大半は「異常なし」。だから入力は選択・チェック式を中心にし、正常ならタップだけで完了、異常のときだけ詳細入力に切り替わるようにしました。忙しい現場から、手入力の負担をできるだけ取り除く判断です。

03Guided

画面に沿えば、迷わず終わる。

新しい操作を覚えてもらうのではなく、誰もが知っている進め方を借りる。セルフレジのUIを参考に、画面の流れに沿って進めるだけで記録が完結する導線にしました。

04 / Admin side

もう一人の使い手、管理画面。

このシステムには、現場とは別の使い手がいます。承認者や品質管理部の人たちが、PCのブラウザで使う管理画面です。現場から提出された点検結果を一覧で確認し、承認・差し戻しを行い、必要なデータを CSV で書き出す。そして、工場ごとに異なる点検内容に対応するための「帳票テンプレート」を、ここで作成・設定します。

わたしはこの管理画面を、ゼロからUI設計しました。とりわけ力を入れたのが帳票テンプレートの設計です。工場ごとに点検項目が違っても対応できる。現場側の「自由度」を支えているのは、この管理画面の仕組みです。忙しい現場の入力体験と、精査する品質管理部の管理体験。性質の異なる2種類のユーザーを、1つのシステムとして両立させることを考えました。

管理画面(PC):承認申請管理の詳細。実施者・確認者・点検場所・各項目の結果が一覧表示され、右上に「承認待ち」ステータス。左に承認・帳票・工場・職員などの管理メニュー
点検結果の一覧・承認(管理画面)
管理画面(PC):帳票テンプレートの新規登録。点検場所やアプリ表示期間、味・臭い・色などの点検項目を「記録する/記録しない」で組み立て、工場ごとの帳票を設定する
帳票テンプレートの作成・工場ごとの設定(管理画面)
05 / Process & my role

進め方と、自分の担当。

要件整理

工場ごとの帳票を、突き合わせる

全国の工場で異なる日報を並べ、共通化できる部分と、工場に委ねるべき部分を、MTGを重ねて整理しました。

現場視察

福岡の工場を、自分の目で見る

手袋のままタッチペンで操作する環境や、幅広い年齢層が同じ画面を使う実態を確かめ、設計の前提にしました。

情報設計

共通の型と、独自の領域に分ける

「全社で統一する構造」と「工場ごとに登録できる項目」を切り分け、汎用性のある帳票の骨格を設計しました。

UI設計

現場のiPadと、管理画面のPCを

記録する現場と、承認・管理する事務所。2つの画面群をFigmaで設計し、レビューを重ねて磨きました。

試験運用

現場に出して、使われ方を見る

立ち上げから運用まで通しで関わり、実際に使われる様子を見ながら調整を続けています。

自分が担当した範囲
企画 要件整理 情報設計 / IA UI設計(Figma) 現場(iPad)+管理画面(PC) デザインレビュー
06 / Result & reflection

まだ、確かめている途中。

本システムは現在、対象となる工場のうち1工場で試験運用の段階にあります。帳票はバージョンを分けて順次リリースしており、全16帳票・26工場以上への展開は、これからです。効果の測定もこれからですが、設計で狙ったのは、紙では手間だった確認・集計を、管理画面の一覧と承認・書き出しで軽くすること。記入漏れや転記ミスを減らすこと。そして何より、忙しい現場が負担なく記録を続けられることです。

工場ごとの違いを〈共通の型+独自の登録〉で吸収する設計にしたことで、拠点が変わっても同じ仕組みで広げられる。全国への展開のしやすさも、この設計に込めた狙いです。

紙をそのまま画面に移すのではなく、「何を統一し、何を現場に委ねるか」を対話で決める。そして、記録する人と精査する人、2種類のユーザーを1つのシステムとして両立させる。その設計こそが、この仕事のいちばんの手応えでした。

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